覚えている事を書いてみようかと
http://majandofu.com/manga/katayama-masayuki-snd-vol1/
この決勝最終戦も僕の競技人生の中でも忘れる事が出来ない瞬間の一つでしたね。
大まかな決勝全体の流れは
①初日から小倉孝が首位を走りいよいよ最終戦へ
②鈴木たろうはかなり厳しい条件を突きつけられつつも奮闘
③一方で暫定2位だった鈴木達也が最終局の親番にて小倉を捉え、トータル首位に立つ。そして後はノーテン終了するのみの状態で最終局
④しかしこれによりたろうが「テンパイ宣言すれば小倉優勝、ノーテン宣言なら達也が優勝」という局面にたたされる
⑤たろうがリーチをしてテンパイ宣言した結果、小倉孝が再逆転をして第7期雀王位となる
と、こんな感じです。
細かい内容は以下観戦記もあわせてごらんください。
http://npm2001.com/jannou/kansenki/7-jannou-4.html
まあ全体の展開は書くと簡単な話なのですが、
正直最終局やその後の場の空気は文章なんかで容易に表現できる物ではなかった。
僕自身、達也さんが小倉をまくった瞬間に、
「次局小倉が条件満たせるアガりを出来なければ達也さんが優勝か・・・・」
と安易に思ってました。
だからこそ、
途中からたろうさんが聴牌を目指している事が打牌から伝わってきた時、その並々ならぬ状況に気づき「どうすんだこれ・・・・」と思ったわけで。
「僕だったら舌噛んで死にたい」というのは見ていた一人の後日談、
僕としては、
「いっそたろうさんが、小倉か達也さんのどちらかと仲が悪かったり、打ち手として評価していなかったりしたら楽だろうけど・・・」
とも思いました。
両者を認めているとなると、あの状況は更に耐え難いだろうな、と。
そして終わった瞬間の場の空気、
タイトル戦の最終盤の空気ってどんな決勝でも緊張感にあふれる異様な物ですが、
あの場の空気は、様々な感情があふれた後にも先にもない独特の物でした。
終わった後も色々な事がありました。たろうさんの行為を「ゲームを歪めた」と批判する人は、協会内外に結構いました。
僕としてはあの立場を責める気なんて同じ競技選手としてなれなかったし、
「ベタおりとなると今度は小倉に不利な状況を作ってゲームをゆがめる。最終的に自分の優勝を少しでも狙うという立場ならリーチをして達也にテンパイを明示するのが正しい」
というたろうさんの意見は理論上正しいと思ってました。
でも「目がない人は邪魔をするべきじゃない」という考え方からの批判は多かった。「どこまでが目無しか?」って議論もそういう人たちにはあまり効果も無かった。
そんな宗教論争に近い世界に巻き込まれた中で、
堂々と自分の信念をつらぬいたたろうさんを見て、「やはり選手としては鑑のような人だ」とおもったわけで。ちなみに私人としては(ry
ただ、
実は僕があの場で一番印象に残った点は別にありまして。
それはたろうさんが最後の手を一巡ツモ切ってリーチした事、この点なんですね。
自分の優勝の確率を0.00001%でも追うのであれば、出来る限り早くリーチを宣言して、達也さんにテンパイを追ってもらわなきゃいけない。
そして「達也さんにテンパイ宣言をさせる為だけのリーチ」である以上、一巡のツモ切り=テンパイ宣言の遅れは、不利でしかない。
それでもたろうさんが一巡まわした理由、
これはもう自分の置かれているあまりのキツい立場に悩んで迷った為だった。
この決勝の前もその後も、
たろうさんが競技で実行してきたスタイルは基本的に自信に満ち溢れていて迷いがなかった。
しかしそのたろうさんが見せたこの不整合、
「卓上のたろうさんもやっぱり人間だった」と僕の心に焼きついたわけです。
まあそれほどこの最終局は本当に辛かっただろう。
でもちなみに、数日後にその話をたろうさんにしたら、
「いや只のミスだから。ツモ切りした点"だけ"は本当に。」
と言ってました^^;
そして物凄い悔しそうな思いをしていた達也さん、
決勝後のスピーチで「翌年こそは文句のない内容で取る」と断言し、
きっちり第八期を取ったのも本当に凄かった。
「格が違う」ってこういう事を言うんだろうな、と思い知らされましたね。
あれからもう8年が経って、
いまやW鈴木は協会の、いや麻雀界のトップの一人となっているかと思います。
そんな二人や小倉孝の色々な思惑が交差したけの決勝、やっぱり忘れられない瞬間の一つですね。
さてついでに、
今回の主役(?)たろうさんの最新本が先日出版されました。
本人も「初心者から上級者まで参考になる内容」と太鼓判を押す出来なので、興味のある方は是非!私も買う!(予定!)
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