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2019年11月10日日曜日

では一方、天才堀慎吾は努力をして来なかったのだろうか?

第十八期雀王決定戦は堀慎吾の優勝で幕を閉じた。

決勝が始まる前にこちらの記事で書いたが、
僕が”緻密流”とか”彫刻刀”とか呼んでいる彼の繊細かつ緻密な打ち筋が随所に垣間見える堂々たる内容での勝利、
特に3日目、4日目に他3人の厳しいマークにあいながらも冷静な対応をし続けたその戦いっぷりは改めて彼の実力を感じさせる物だったと思う。


さて、ちょっと思った事がある。
先日最高位となった坂本大志、
そして今日勝った堀慎吾、
二人は10数年前から麻雀界に身を置いている点、そして今年自団体の最高峰タイトルを初めて獲得した点では同じだが、
二人の業界内の人たちが持っているイメージは正反対ではないだろうか、
という点だ。

坂本は前回日記で書いたように「努力の人」というイメージを麻雀プロの間で持たれる事が多い男だったが、
一方の堀は「天才肌」というイメージを持たれることが非常に多い男である。

堀が数年前に最高位戦Classicを取った時の記事でも書いたのだが、
彼はプロになった時期こそ第九期とそこまでの古株ではないが、
そのかなり前からすでに都内の雀荘関係者や麻雀プロにその名を知られた男だった。
協会に入る際に、かの鈴木たろうが「今度強いやつが来る」と言っていたのもあり、まさに鳴り物入りでこの業界に来た男でもある。

実際にストレート昇級というわけではなかったが順調にリーグを上げる姿、
そして勉強会等を通してその圧倒的な知識と技術を知った人たちの評価もあり、
彼は協会内でその存在を知られていく。

何より彼は競技麻雀に対して非常にクールで、常に勝負を楽しむ姿勢を崩さない男である。
「タイトル戦の決勝なんて相手ができる限り強い方がいい。そうじゃなきゃ楽しくない。」
100%の本音でこの言葉を話すあたりが彼の器量のでかさだろう。
そりゃ確かにそうだけど僕のような小物は多少なりとも勝ちやすい相手を(ry

ちなみにとあるタイトル戦では「楽しみたいから」という理由で本選シードを蹴って予選から出場した事もあったりする。これ協会で唯一の事例なのではなかろうか。

そういった競技に対する飄々とした態度、
そして実績の積み重ね、
これらが彼の”天才肌”というイメージを固めていった。
実際に今回の決勝でも彼らしいこんなつぶやきをしていた。


「相変わらず天才の考えてる事はわからんなあ・・・」と思ったのは僕だけじゃないかもしれない。

実際に彼は初日に大量のリードをし、
二日目以降は常に厳しいマークにあい続ける展開だったが、
そんな中でもいつも通りに飄々と余裕をもって楽しんでいるようにさえ見えた。


が最終日の死闘の中では、
「彼もやはり人の子」と思わずにはいられない、
そんな事を感じたシーンが多々あったのも事実である。

やはりそれが強く出たのは19回戦と20回戦。
特にこの瞬間、
さすがに彼の表情が曇ったように見えた。

優勝を追いかける矢島が19回戦に技術と執念で作り上げた奇跡の四暗刻。
これによりほぼ決まっていた勝負が振り出し近くまで戻される。
「そこまでは苦しくても楽しさが勝っていたが、この時ばかりは苦しさが上回った」
と本人も言っていたシーン。

が、それでも彼は飄々と打ち続け、そして勝利を手にする。
そして優勝した瞬間彼からこぼれ出た笑顔。
競技で勝ってこんなうれしそうな顔をする彼を初めて見た気がした。
そうだな。
嬉しいに決まっているか。


さて表題の問いに戻る。
堀は長く天才肌として知られていた男である。
だが本当はどうだろう。
実はメンバーを始めた当初、キャリアの浅い時期に努力が必要だった時期が長くあったのかもしれない。
その逆に最初から凡人よりもはるかに高いセンスで要領よく麻雀というゲームをこなしていたのかもしれない。
それについては今となっては知る由がない。

だがたとえいずれにしても、
彼の”今の麻雀”が、けして才能だけで成り立っているわけでは無い事は間違いないだろう。
ひょっとしたら本人は麻雀で努力した覚えなんてないのかもしれないが、
その緻密さ、精度の高さは、坂本大志と同様に高いセンスを土台に気が遠くなるほどの鍛錬が積まれた事がバックボーンにあるのは見ていれば明らかと感じる。
才能だけで勝てるわけでもない。

坂本大志に堀慎吾、
イメージは正反対、
タイプも違うだろう、
でも二人とも十数年前からこの業界で生き、長い間自分の麻雀を磨いてきた紛れもない強者である。
その二人がついに自団体の最高峰タイトルを手にしたこと、同じ世代を生きてる身として嬉しいし、うらやましい、そしてちょっと疎ましい(正直に勝てる気があんましないっからw)、
そう思うのであった。

12月には最強戦がある。
この二人が最高峰の舞台で戦うかもしれない。
ちょっと見てみたい絵だ。


最後に、
雀王決定戦を戦った4人の選手の方々、
改めて今年も素晴らしい勝負をありがとうございました。
そして堀大先生、改めておめでとうございます!