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2018年4月19日木曜日

麻雀漫画について書いてみる⑭ 幻刻の門 新撰組70’s

今日紹介するのは「幻刻(とき)の門 新撰組70’s 」
近代麻雀にて連載されていた、まあ比較的マイナー作品でしょうか。



2008年、主人公津田ナオトは麻雀で6連勝した後、負かした男から鉄パイプで殴られ意識不明となった。
そして目覚めた時、彼はなぜか昭和43年にタイムスリップしていたのである。
書籍等で知るだけの存在だった阿佐田哲也や若き日の小島武夫と出会い戸惑う中、ナオトの知る2000年代の理論と打ち筋に阿佐田は驚愕し、麻雀新撰組を結成して彼を招き入れる。
そして自分が知っていた史実に巻き込まれる立場となった事にナオトは喜びながらもその中で様々な苦悩を味わっていく・・・

第2話まで読んだときは「面白い作品が久々に出てきたかも」と感じました。
ナオトはいうなら江戸時代にタイムスリップした医者「JIN」に近いテイストで書かれており、
阿佐田・小島の戦術観、
理論だてされていない当時の戦術観、
巷の打ち手のレベルの低さ、
ナオトの知る2000年代の研究された思考や戦術をベースにこれらに対して革新的な戦術や打風を提供していき、阿佐田も含めた様々な人々に認められていきます。

こういったナオトの視点を軸に書かれた「現代戦術と70年代の戦術の比較」「考え方のギャップ」「改めての現代戦術の合理性についての説明」もされており、
彼の時代に対する葛藤等も含めた様々な描写も面白い作品です。


2巻の途中までは^^;

これがどうも2巻後半で旅打ちに出るあたりから雲行きが変わります^^;
ナオトの戦術観がぶれ出し、色々な試行錯誤をする中で、「俺の打ち方は実は通用しないんじゃ?」という考えに向いはじめ、
ついに「理論だけじゃ勝てない。感性だ。」という方向に彼が走り始めると連載がパワーダウン。

人気も落ちたのか単行本も2巻、物語の途中までしか出ずに終了してます(近代麻雀上ではちゃんと完結)

リアルタイムで見てた当初も「すごい面白いけど、これどうやって終結させるんだろ」と思った予感が、嫌な方向に働いた作品でした^^;
うーん序盤が本当におもしろかっただけに非常に残念。

そしてもう一つ、
今読み返すと2008年当時の「好形・スピード重視」のトレンドが結構色濃く出てる作品とも見えますね。
その典型が2話目のナオトのこのシーン。

3478⑧⑧⑨七八九白白 ドラ4
ここから9をチー。

・・・まあやりたい趣旨はよくわかる。
あがりトップとか2000点が超偉い局面ならありだろう。
けどフラットな東場でどうかとなると、さすがに2018年現在のマジョリティは「鳴かない」じゃないでしょうか。
十分に好形・高得点が見込めるこの形をわざわざ速攻にしちゃうのはなあ^^;
と、改めて読み返すと2008年と2018年のトレンド比較にもなる作品かもしれないですね。


ただこの第2話、
小島がリーチ一点読みをしようとするのに対して「わからない」とナオトが堂々と言う姿などなど、
彼の麻雀への高い見識が随所にうかがえる回で、その後のストーリーの骨子にもなってます。
上述の通り後半は残念な作品ですが、逆に言えば1巻はマジでお勧めです。
興味がある方はぜひ^^