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2018年4月16日月曜日

麻雀漫画について書いてみる⑬ 幻に賭けろ


今日紹介するのは嶺岸信明先生の90年代の名作「幻に賭けろ」。
嶺岸先生といえば超長期連載の「天牌」のイメージが強いですが、他にも多くの名作を作ってます。
ちなみに麻雀漫画の単行本刊行数日本一の漫画家がこの嶺岸先生です!



親の預金100万円を勝手にひきだしてやくざの経営する雀荘に勝負にむかった正真正銘のクズ男、三島麻紀男。
だがその勝負にてたまたま出会った麻雀プロの頂点に立つ男、雀聖・藤峰昴に完敗する。
やがてその打倒の為に彼は麻雀プロの世界に飛びこみ、様々な人と出会い成長をしながらもついにAリーグにて藤峰との戦いを実現させる事となるのだが・・・・
幻かもしれない、でもそんなはるかな夢を追い続けるから生きてゆく、男たちの戦いを描いた作品。


主人公の三島そして最強の打ち手藤峰、この二人が物語の中心だが、
やはりそれを一番際立たせているのは二人に次ぐライバル役の小沢と今井、そして彼らの実力を見事に表現している丁寧なつくりの闘牌シーンだろう。

小沢は場の高い色・安い色・相手の動向を見極めて鳴きを多用し場を支配する「手麻雀」の名手、
見事な仕掛けを作中でも何度も披露している。

一方今井は「浮かせ打ち」をベースにした面前順子手の名手、
例えば以下の形
三三六七八九⑦⑧446789 

ここから三打ち、そして以下のテンパイ
二三七八九⑦⑧⑨44789

三を浮かせる事で678と789の両方を睨み⑥⑨だけでなくすべての受け入れを想定した見事な一打。

彼ら二人の強さを際立たせる見事な描写は原作者である土井泰昭さんの手腕を表しているともいえる。

ノーマーク爆牌党と同じく麻雀をよく知っている人でないとわからない面白さの面は多いが、そのクオリティは多くの麻雀プロの折り紙付きの作品。

特に麻雀漫画史にも残る名シーンの一つと呼ばれる最終話、
ついに三島が藤峰をとらえ優勝をあと一歩のところまで引き寄せた最終局の戦いは必見。


藤峰の条件は三島との5700点差を捲る事。(8000以上のロン、1300-2600ツモ、3200以上直撃)

そしてその中で訪れた以下の聴牌
①②③④⑤⑥⑥⑥⑨⑨ 中中中(ポン)

③か⑨ツモなら逆転、直撃ならどれでもOK。
だが親番の小沢も懸命に連荘を目指す中で二枚目の⑨が場に切られる。
この厳しい状況で藤峰の決断は「ポン」

①②③④⑤⑥⑥⑥ ⑨⑨⑨(ポン) 中中中(ポン)

そして和了形からの打⑤

①②③④⑥⑥⑥ ⑨⑨⑨(ポン) 中中中(ポン)

覚悟のフリテン①④⑤待ち。
①を切れば5面待ち、しかしこっちならどれをツモでも1300-2600。
「雀聖が、天命を待った」と描かれた名シーン
そして三島も同時に聴牌をいれる。
越えたくても越えられなかった雀聖をあと一歩まで追い詰めた瞬間、
繰りひろげられる運命のめくりあい、
そして・・・・

気になる方は原作をご覧くださいw


そのほか多数の素晴らしい闘牌シーン以外にも、麻雀の細かいロジカルな部分についての説明も多い作品でひょっとしたら勉強になる点も多いかも。

ただ昔の作品だけに、「今となっては無理がある」というシーンがあるのも事実^^;
その典型例が1巻のこのシーン。

このシーンに至る前話にて、
「ペンチャンを八九で落とした時、九八と落とした時のそれぞれの読み方」ってシーンがあるんですね。
そしてその講釈内容うけた三島が、まさにその内容をもとに相手を挑発するシーンなんですが・・・

読めるかっw
が今の麻雀打ちのマジョリティ思考でしょう。
必死で読もうとする今井の姿が今となっては涙を誘う^^;