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2019年9月26日木曜日

選手として大事なのは数字よりも愛される事であり記憶に残る事であり

やはり今日、
将棋ファンの多くが歓喜したNEWSはこれだろう。
木村一基九段が7回目のタイトル挑戦にて初のタイトル「王位」を獲得。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6337715

さてこれがどのような偉業か、
・史上最年長でのでの初タイトル(46歳)
・史上最多7回目のタイトル挑戦を経ての初戴冠(今回負けると単独最多の7回連続タイトル挑戦失敗だった)

将棋知らない人にかみ砕いて言えば、
「実力はあれど長い間最後の運の一押しに恵まれず敗れていた苦労人がほぼラストチャンスだった舞台でついに悲願の初優勝」
という所である。

2006年にA級初昇級を果たす等しぶとく長く第一線で活躍していた木村九段、
だがとにかくタイトルは”あと一歩”の連続だった。
棋士のピーク年齢から”ラストチャンス”と考えていたファンも多かった今回、
相手は現役最強の一角である豊島名人、
”実績多数のベテランが若手の挑戦を受ける”という構図は多々あれど、
今回の様に”若手がベテランの挑戦を受ける”という珍しい構図の勝負、

無論下馬評では圧倒的に豊島が有利、
それでも多くの将棋ファンが木村を応援していた。
無論僕もである。
 

改めて木村一基をどのように表現すべきか。
「遅咲きの名手」というには、ちょっと違う気もする。
順位戦A級もタイトル挑戦も10数年前から数回経験しているし、
この10年以上、第一人者とは言わずとも十分に活躍してきた棋士である。

ちょっと他分野を見てみるとして、
サッカーだったらコートジボワールのディディエ・ドログバだろうか。
一部では高い能力に評価を受けながらケガ等の関係もあり中々日の目を浴びなかった中、
20代中盤にマルセイユからチェルシー移籍した後は世界トップレベルのFWとなった名選手である。
でも20代中盤ってのは早いと言えなくもないのか・・・

競馬だったら2000年代に活躍した「カンパニー」という馬だろう。
35戦12勝、
天皇賞秋、マイルCSと2つのG1を勝っている名馬だが、
特質すべきはこの2勝が彼が8歳の時の34戦目、35戦目(ラストラン)だった事。
G3,G2の勝利経験はあり充分な実力は認められながらも中々に運に恵まれなかった中、8歳で悲願のGI初戴冠、
無論JRA記録である。

麻雀界だったら文句なくこの人、近藤誠一さんだろうか。

近藤さんは30代中ごろと遅めのデビューを果たした中、
最高位戦のリーグ戦等では昇級を続けそれなりの成績を出していた物のタイトル等には縁がなく、
無礼な話をすれば「トップ選手とは認知されていない普通の選手」と長い間競技愛好家の多くは思っていた感があった。
実際に近藤さんが決勝に初めて進出した第8回日本オープン、
同じく決勝に残り本命と呼ばれた同期の村上さんに対して近藤さん本命と見る声は少なかったし、そこで村上さんが悲願のタイトル初優勝を果たしたことも両者の差をさらに広げた感はあった。
http://npm2001.com/nihonopen/8-nop.html
その近藤さんが打ち手として大きな花を咲かせ始めたのは、
デビュー後15年が過ぎ年齢も50間近だった時期の第37期最高位獲得からである。
これ以降最高位戴冠4回等の多くの実績を残し、今や押しも押されぬ麻雀界を代表する選手として知られている。
長く競技麻雀界を見てきたファンの多くは「遅咲きの大器」「中年の星」として近藤さんを応援する人が多い所以である。


改めて今日、
将棋界は「木村頑張れ」の声で一色だった気がする。

実際には周りの声援なんて選手にとって多少の励ましにはなれど、勝負の大きな力にならない部分が多い。
将棋のタイトル戦は個室で戦うのだからなおさらだ。
でもここまで一丸と木村ファンや木村ファン以外の多くの愛好家がその優勝を願う声を見て、
その声援が勝利を後押ししたのかもしれない、とドライな僕ですら思ってしまう。

将棋界には99回もタイトルを獲ってる羽生という怪物がいる。
彼は同じタイトルを19回連続で取ってたりする。
タイトルを7個同時にとったりもしたっけ。

どの分野にもそんな化け物がいたりして、
木村先生が記録の上でこれを回る事なんておそらくできないだろう。
多分今日勝った豊島名人にも記録の上では勝てないと思われる。

でも記憶の上ではどうだろう。
少なくとも幾人かの記憶の中で木村一基の名前が羽生や大山すら超えた、かもしれないw

多くの将棋ファンが歓喜したこの偉業に僕も酔いしれた一日でありました。
改めて木村先生おめでとうございます!
 

僕もこんな風にいつか勝った時に多くの人に賞賛される打ち手
勝つのは運が必要、
勝った時に賞賛されるには実力が必要、
勝った時にどれ位賞賛されるかがそのうち手の器量、

それが僕の考える競技麻雀の本質だったり^^;