follow us in feedly このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年11月12日日曜日

鈴木たろうの底知れない恐ろしさ (第16期雀王決定戦より)

第16期雀王決定戦は前回の日記でも取り上げた金 太賢が優勝、
4回目の挑戦にて悲願の雀王の称号をついに獲得、
最終日の内容も新王者に値する堂々たる物だったと思う。


そして敗れた3者もそれぞれの麻雀で存在感を示した最終日だった。
3日目に続きチャンスに恵まれない中、精度の高い堅実な麻雀でその実力を見せた田内、
「サボらない麻雀」をテーマに最後まで場をかき回し金を追い詰めた角谷、

そして鈴木たろう

今回の最終日、色々な局があったが、
どれか一つを取り上げるならやはりたろうがその高い雀力で解説陣や視聴者を驚愕させたこの一局を紹介したい

19回戦南2局
状況は以下の通り
点数ポイント
(~18回戦)
東家たろう1820029.6
南家角谷860044.5
西家田内24600-193.7
北家48600116.6

状況概要:
残り2半荘の中、首位の金がこの半荘も好調。
既に87Pをリードされているたろうが最終半荘に現実的な優勝条件を残すにはこの半荘の残り3局で約3万点差の金をまくる事が条件の中、迎えた南場の親番。

以下動画の6:12:00 頃
http://live.nicovideo.jp/watch/lv308282508
https://freshlive.tv/threearrows-ch/166752


ドラドラのタンヤオ手となったたろう、2つのポンを入れ9巡目にて以下の形となる。
四四⑥⑥⑦67 ドラ四 444(ポン) 888(ポン)

完全イーシャンテンのチャンス手(ソーズ5-8受けの8はポンしてはいるが)、
これを4000オールとすれば金との差は約14000点、まさに起死回生のチャンス手となっていた。

一方でたろうの上家だった金もこの動きを警戒しつつも、
自分の手牌、押し気味の角谷へのケア、そしてたろうの捨て牌がまだ必要牌を絞り込めるものでは無かった中、苦しい進行

そして10巡目、金の手牌が以下の通りになる
六八④④⑥⑦123455東 ツモ6 ドラ四


前巡に長考の末に7を切っている。そして東は唯一残っているたろうの役牌。
確実に鳴かれない1あたりを切る選択もあったが、ソーズが一番たろうには通りやすいであろう事実と自分の手がイーシャンテンという点を考慮して打5。

たろうこれをチーして絶好の聴牌

、、、となるはずだったが、これを平然とスルーしてツモ山に手を伸ばす姿がそこにあった。

実況の松嶋、そして解説の渋川と木原、全員が「鳴くに決まってる」と考えていただろうし、僕もそうだった。
何が起きたか意味が解らない中、その理由を考える
「トイトイを見てる?」
「怒りに我を忘れてる?」
どの理由もしっくりこない。

そしてしばらくした後に解説の木原が見解を述べる。
「金の切り出しが、7→5と出ている点と金のポイント状況を考えると5がトイツ落としの可能性が高いと読み、ここでドラの四を引けば金からの直撃がとれるかもしれない、と考えたのではないか」

後の打ち上げの席で改めてたろうにその理由を聞いたところ、全くもってその通りだったわけである。

直後に角谷からリーチが入るも、
たろうの読みどおりに金は2枚目の5をきり、それをチーして以下の聴牌。
たらればだが、もしもスルー直後のたろうのツモ山に⑤⑧や四がいたら、
本当に狙い通りの直撃5800や12000で金に肉薄していた事だろう。

四四⑥⑦ ドラ四 567(チー) 444(ポン) 888(ポン)

確かにタイトル戦決勝の最終盤、
ここで金にトップを取られれば事実上の終結、
そしてこの手を仮に4000オールと出来たとしても二の矢が必要になる状況を考えると、金から直撃を取れる絶好のチャンスと取れなくも無い。

ただ「この親を流されたらほぼ敗北」という状況でスルーという判断がそもそも下せるか。ましてや5-8受けの8は自分でポンしている。

状況に対する高い分析力、
金の動向や心理も計算した冷静な判断力、
このギリギリの状況で自分の読みに対して勝負をゆだねられる強靭なメンタル、
全てが備わってなければ出来ることじゃない。

これを平然と出来る彼の底知れない力にただただ戦慄を覚えた一局だった。

思えば10年前にたろうさんは協会に来て、数年後には既に協会トップに君臨していた。
多くの選手が「たろうに追いつけ追い越せ」と彼を目標にしてきた。
僕もたろうさんの麻雀を何度も見たし、たろうさんは質問を受けた時にはおしみなく自分の思考を披露してくれたりした。

この10年、自分が進歩を出来たという実感は自分の中で多少なりともある。

でも「ちょっとはたろうさんとの差が縮まったかな」という昨日までの自分の思い込みに対して、
「全然縮まってないよ。むしろ俺も進化した分で開いている。」とでも言われたかような気さえした。

僕がプロになってから、今まで何度もたろうさんの対局に感動を貰ってきた。

第15期麻雀最強戦におけるオーラスの四暗刻
2年前の第10回オータムチャンピオンシップ決勝最終戦において優勝を完全なものとした8タンキの9600
http://npm2001.com/autumn/10-aut.html

そして今年新たに途轍もない感動をもらい、
それと同時に「自分がこの領域にいけるなんて事があるんだろうか」
という恐ろしい不安を覚えた、そんな一日であった。

改めて選手の皆さんお疲れ様でした。
そして決勝を見てない方々、是非ともタイムシフトをお勧めします!

【追記】
今日の出来事
ワシ「って感じで19回戦の記事書いたんでよかったら読んでください。」
たろう「ありがとう。良く褒めてくれてるw、、、でもね」
ワシ「?」
たろう「チーテン取るとほぼツモ専になるって点も書いて欲しいかな。流石に3フーロだと待ち限定されるでしょ?だからあの状況の場合、聴牌とると実質4枚(⑥と四)ロスって感覚があって。
あと金・田内は俺の仕掛けに対応せざるを得ない点、そして角谷は打点を作らざるをえない点から、進行が遅い局になる可能性が高いと思ってのスルーした点もあってさ。」




僕ももっと頑張ります。ハイ。