「強くなればなるほど負けた時くやしくなります
むしろかけた時間の分だけ負けるとくやしいので進めば進むほどくやしくなります」
漫画「三月のライオン」で主人公の将棋プロ 桐山零が将棋についてこんな風に語るシーンがある。
直後に「将棋楽しいのか?」
って質問を受けた彼がフリーズに陥る、
コミカルな描写ながらも勝負に人生をかけている人間の矛盾を描いた、個人的には結構印象に残る場面だ。
僕ごときですらこの心境は共感できる部分があるし、
「村上さんとかたろうさんとかは負けた時にどれ位の暴風雨が心の中で吹き荒れてんのかね、、、」
とか思ったりもする。
麻雀は基本が運ゲーである。
でも、だからこそ負けた時、特にひどく納得のいかない負け方をした時、
自分の技術は勿論かけてきた時間、そして目的や意味その物を否定されたような気分になる、
この気持ちは競技選手なら一度は味わったことがあるのではなかろうか。
さて昨日、
2017年度の麻雀最強戦決勝が行われた。
優勝は当協会の金太賢、
先日の雀王獲得に続く快挙、
同じ団体のそして同じくらいの世代の男がやってくれた事についてはうれしい限りだ。
ただやっぱり負けた人たちの姿を見て、「悔しいだろうなあ・・・」と思ったりもする。
特に最後の最後まで優勝を争った連盟の猿川さんについて。
以前にこんな日記も書いた。
http://susumutakenaka.blogspot.jp/2016/10/blog-post_11.html
タイトル戦というのは究極のマゾゲーである。
勝ち進めば勝ち進むほど次を勝ち抜く難易度は上がっていくし、
勝ち進めば勝ち進むほど負けた時の悔しさというのは高まっていく。
既に多くの実績を上げており実力的にも日本最高峰の男が、
日本最高峰の舞台にて最後の最後で惜敗する、
想像しただけで吐きそうな位に悔しいだろうし、心の中はアイバンとかカトリーナ級のハリケーン状態になりそうだ、とか見てて思ったわけで。
そしてRMUの多井さん、
普段はのらりくらりとした風貌としゃべりだが、麻雀にかけるプライドも情熱も人1倍、いや人10倍以上だろう。
昨日にかける思いは要所要所でうかがえた。
特に印象的なのは準決勝の東場にて、
影山さんのリーチと藤崎さんの索子ホンイツに対して、
真っ向勝負で索子6sを切り出して満貫をあがり切った場面、
「俺には見えてない安全理論があるのか?」とか疑うよりも、
今日という勝負にかける多井さんの並々ならぬ決意が伝わった局だった。
金に大逆転をくらった浅井や、
猿川さんをあと一歩まで追い詰めつつも敗れた水口、
みんなみんな「悔しいだろうねえ」と思わずにはいられない。
そういえば準決勝D卓ではアマチュアの影山さんがオーラスにピンフドラ1をリーチして、
裏ドラ1枚で逆転の手を和了せずツモにかけて敗退していたが、
僕がプロになった一年目の最強戦(鈴木たろうが優勝した年)も、
準決勝にて当時連盟のクラッシャー海老海さん(記憶曖昧なので間違ってたらすみません)が、
まったく同じようなスルーをしていたのを思い出した。
損か得かじゃなくて、そこに座った本人の意思、いいんじゃないでしょうか。
見逃して負けて一日たって今となって本人はすごい後悔している可能性もある、
でもそういう想像も含めてこういうドラマは見ていて嫌いじゃない。
そしてそういった人達の思い=くやしさがあるから
優勝者は輝くわけで。
改めて金、強かった。
そして選手の皆さん、
今年も素晴らしい大会をありがとうございました!
自宅でやらなきゃいけない仕事を完全放置して見入ってしまったために、
今週は色々と激務になりそうな月曜に書いてやった日記でありました・・・・