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2018年1月29日月曜日

人間関係とは普段の積み重ねである

焦っていた。
只ひたすらに焦っていた。

その日はいつもの通り、行きつけの新宿某店にてフリーを打っていた。

この店では特定の時間になると「3勝戦」というイベントがある。
スタート時間から店内で最初にトップを3回とった人間は店のポイントを5000Pもらえる。
これはそのままゲーム券につかえたり、楽天とかの買い物OKだったり、とかなりお得なポイントである。
※ちなみに2,3番目も2000Pもらえる。結構おいしい。

そしてこの日は開始から即2半荘連続トップであと1勝、
しかもたまたま客も少ない=ライバルが少ない日であり絶好のチャンスだった。
しかし次半荘、そしてその次の半荘と同卓の従業員に連続でトップを奪われる展開、
さらに両方とも自分のポカもあり数百点差にて差し切られての2着というアツい内容だった。

そしてそのジリジリした展開にも焦りはあったが、それ以上にもう一つの懸念があった。
我が家に同居している相方の存在である。


相方は麻雀についての知識がほとんど無い。
僕が麻雀プロという事は無論しってるし、こうやって麻雀を打ちに行くことも理解はしている。
が、それでも僕がフリーで麻雀を打つ事で自分が長時間放置されることにはあまりいい顔はしない。
そしてこの日も「●●時までには帰って来い」という門限を指定されていたが、それもそろそろ過ぎそうな時間になっていた。

5000Pは大きい、
ただ事情を後で相方に説明してあやまるにしても、
2時間だの3時間だのオーバーするのはさすがに気まずい。
そう考えるとチャンスはあと1回か、、、、

そんな事を考えながら、
自分のトップを2回連続ギリギリで阻んでいるメンバーにちょっと皮肉を言ってやった。

僕「メンバー君、僕は今非常に焦っている。なぜか解るかね?」
柏野(仮)「3勝戦ですね?」
僕「その通り。あと1勝となるとここは是非取りたい。がここから数戦となると約束した門限を大きく上回り我が家の関係が崩壊する事になりかねない。もしそうなったら君に責任が取れるのかね?」

八つ当たりもいい所であるw
が彼はいつも通りに微笑んでこう答えた。

柏野(仮)「武中さん、それは違います。」
僕「?」
柏野(仮)「人間関係は普段の積み重ねが大事なんです。普段からのさりげない相手への気遣いや思いやり、そしてコミュニケーション、それらがあれば今日の事なんて何の問題も無いんじゃないでしょうか?」
僕「・・・・」

僕は自分の考えを恥じた。
そして冗談とはいえ柏野(仮)を責めた自分を恥じた。

そう、人間関係とはそういうものなのだ。
コミュニケーションはけして急には取れない、普段からの細かい気配り、当たり前を当たり前と思わない心、これが大事なのだ。

眼鏡をかけた彼の丸顔が急に凄い尊い物に見えてきた。
よく見るとちょっと彼は大仏に見えなくもない。

何はともあれ、彼に大切な事を思い出させてもらった。
そんな気分になりながら心を落ち着けこう告げる
「勝っても勝たなくてもこの半荘で終わります」

相方の為に早く家に帰ろう、
そんな気分だった。
だがそれでいたって冷静になれたおかげか次の半荘トップを取り無事に5000Pもゲットして帰る準備をする。

最後に荷物をまとめているとき彼に声をかける
僕「ありがとう柏野(仮)。君のおかげで大事な事を思い出したよ。」
柏野(仮)「いいえ。どういたしまして。」

そして帰宅の途についたのであった。


惜しむらくは、
もしも柏野(仮)が既婚者とかだったら凄い説得力があったのだが、
店で今まで見聞きした話だと彼はどう考えても独り身街道驀進中の独身だという点である。


なおこの物語は登場人物の名前等を含めて一部フィクションです。
ご承知おきください。